故意
それが実行行為に当たり、それによって構成要件的結果が発生することを承知で行動することを故意による行動という
さらに、刑法38条により、故意のない行動は、罰せられない
つまり、故意でなければ他人のものを壊したとしても、刑法では罪にはなりません
しかし、これでは問題が生まれます
1.具体的事実の錯誤
同じ構成要件に当てはまる犯罪を犯すが、その具体的内容が違っている場合
2.抽象的事実の錯誤
違う構成要件に当てはまる犯罪を犯してしまった場合
3.客体の錯誤 ex.人違いで殺してしまった
4.方法の錯誤 ex.そのとき偶然、違う人を殺してしまった
※1,2に対してそれぞれ3,4の分類がある
このような錯誤において、認識した事実と現実が違っていた場合、故意が認められず、不当に刑が軽くなってしまうことがあります
例えば、AさんがBさんを刺そうとしたら、思わずCさんを殺してしまった場合(これは、1の具体的錯誤であり、4の方法の錯誤になる)、Aさんが殺そうとしたのはBさんであり、Cさんを殺したのは故意ではないから無罪となる。
これはあきらかに道義的におかしい
よって1の具体的錯誤に関して次のような解釈がなされる
①具体的符号説 →これは先ほどと同じく、認識と現実が一致しないと故意を認めないとするもの
ただしこの場合、3の客体の錯誤の場合、その場にいた誰か(本来の目的とは違っていても)を殺そうとしてその場にいた誰かを殺しているため、具体的な認識と結果の対象が一致しているとみなされ、罰せられることになる。
4の方法の錯誤の場合は、その場にいて狙った人を刺したわけではないので、故意は認められない
②法定的符号説 →これは法定の構成案件が一致するならば、認識した事実と異なっていても、故意を認めるとするもの
つまり、人違いであれ、その客観的構成要件は同じ(殺人)であるため、故意を認めることになる。この場合、客体の錯誤であっても、方法の錯誤であっても故意となり、殺人が認められる
次は、2の抽象的事実の錯誤について話します
このとき、例えば、AさんがBさんを殺そうとして、ナイフを誤ってBさんの飼い犬に刺してしまった(こんなことがあるのかはさておき)とき、先ほどの法定的符号説での、構成案件が一致しません。
よって抽象的事実の錯誤の場合、
①抽象的符号説
罪を犯そうとして、行動をしている以上、結果がどうあれその人の社会的な悪さは、自明であるとして、想定していたよりも軽い罪の場合には、異なる構成要件であっても、故意を認める(刑法38条2項による)
②法定的符号説
保護するものと行為の実質的な重なりがある場合には、重なり合う範囲での軽い罪の、故意犯の成立を認める
ここでは殺害という点では一致するものの保護するものが、犬(人の財産とされる)と人の生命であるため、保護するものが異なるために、故意が認められないことになる
以上です、少し複雑ですが、次の過失とあわせて覚えておきたいところになります
関連法
第38条
1.罪を犯す意思がない行為は、罰しない。 ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
2.重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たること となる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはでき ない。
3.法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかっ たとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することが できる。